今回は、HCL社が公表している ハイブリッド環境におけるSmartCloud Notes Cloudメールからのオフボードガイド の p19 「ノーツクライアント設定の更新」の記述内容と、メールデータの移行(複製)が完了し、ユーザーロールアウトに至るプロセスを全自動化させる方法をお伝えします。
1. ガイドにみるオフボードに必要なクライアント作業とは
まずその前に、オフボーディング時に必要なノーツクライアント設定の更新とはいったいどんなものかを簡単にご説明します。ガイドには下記のように記述されています。
Notes クライアントを使用するユーザーの場合は、メール・ファイルの新しい場所を反映するように場所の設定を更新する必要があります。 個人アドレス帳 (names.nsf) の "SmartCloud for <<ユーザー名>>" ロケーション文書を編集して、社内メール・サーバーと メール・ファイルをポイントします。ブックマークやその他のメール・ファイルのプリファレンスを更新して、メール・ファイル のオンプレミス レプリカを指すようにします。
オンプレミスのメールサーバーは、新設のプライベートクラウドや HCL 公認の MSP によるサーバーを選択されるお客様も多いと思います。その場合には上記ロケーション文書の書き換えに加え、
新しいサーバーへの接続文書の作成
ワークスペースに新しいメールDBの配置(古いメールDBの削除を含む)
ブックマークの更新
古いローカルメールレプリカの削除(存在する場合)
Sametime サーバーの指定(Sametimeご利用時はEclipse上)
も必要になってきます。
2. MarvelClient 利用の全自動化とそうでない場合のシナリオ
ガイドを注意深く読み込むと、このクライアント設定の更新はプロジェクト全体のボトルネックになる可能性を秘めています。
切り替え後のユーザーが取るべき操作や自作ツールを事前にガイドとして告知し、切り替え後100%ユーザーがそれを実行してくれることを前提としているからです。
SmartCloud Notes と新しい環境間でメールDBの複製が完了し用意が整い Domino Directory 上のユーザー文書のホームサーバーを書き換えた直後からエンドユーザーが新しいメールDBを使用できるようになるまでのタイムラグは最小限にしたいものです。
ホームサーバー書き換えはユーザーが使用していない時間帯(平日深夜や週末)に通常行います。そこでエンドユーザーは、朝一番で所定の配布された手順書に従い、システム部門が作成した自作ツールを動かすこととなります。
しかし、エンドユーザーが必ずタイムリーに行うとは限りません。まったく気にも止めない社員も、2-3日放置する社員もいるかもしれません。特に役員以上の方には代わりにやってあげないといけないなど作業人員の配置も考慮にいれる会社もあるかもしれません。
お分かりのとおりすべてがエンドユーザー任せになりコントロールが利かない状態に陥り、社内メールシステムの破綻が発生する危機も起こりえます。
MarvelClient を利用した場合には、必要なすべての設定が準備されており、エンドユーザーがノーツにログインするだけですべての設定変更がバックグラウンドで自動的に行われます。ユーザーはほとんど気づかないうちに新しいメールDBを利用するシナリオになります。まさにエンドユーザーにとってもシステム部門にとってもゼロインパクトでの切り替えが実現できます。
加えて MarvelClient の Analyze DB では、どのユーザーがまだ新しいメールDBを使用していないか(原因は単にまだNotesへのログインをしていない)も分析情報から観測することができます。
3. ISW/ケートリックの MSP への移行時に MarvelClient 無償提供
話は変わりますが、HCL 公認の Cloud Hosting Partner のひとつ ISW では、SmartCloud Notes ハイブリッドメールをご使用のお客様にこの MarvelClient を移行時に無償でお使いいただけます。MarvelClient に関する必要な設定はすべて ISW で実施。MSP/HCL が開発したデータ移行ツールを MarvelClient にも連動させボタンひとつで移行切り替えのプロセスが完結するようなツール開発もISWは行っています。これによって、スムーズかつスピーディーな移行プロセスの立案と作業が可能になります。
4. オンボードでも有効。アクションのサンプルもあり
今はオフボードばかりが話題になっていますが、主にBCP対策や運用コスト削減のため近い将来メールはクラウドに置きたいというお客様も多数いらっしゃいます。オフボードでもオンボードでもクライアント設定の更新のシナリオはほとんど同じです。
MarvelClient にはクライアント設定更新のためのアクションがサンプルとして提供されています。かつてSmartCloud へのオンボードとして活用されていたアクションを再利用できます。SmartCloud というカテゴリのアクションを使って、今回のオフボードのクライアント設定更新のシナリオを見ていきます。
5.アクションの作成(例:ロケーション文書の変更)
それでは実際のアクションを作成するところをご紹介します。
ロケーション文書アクションはサンプルの「Manage Online Location for all clients」を開き、「このサンプルからアクション作成」ボタンを押しオフボード用のロケーション文書設定を定義しています。
このアクションに任意のわかりやすいタイトルを付け、アクションには「存在する場合にのみ変更」にチェックをし、変更先のロケーション名を指定します。このとき通常のロケーション名は「IBM SmartCloud - XXXXXXXX」となっていますので、ワイルドカードを指定して対象を決定します。(事前に MarvelClient ではユーザーの使用するロケーションを調査することもできますので安心です)
このアクションの下の方には、ロケーション文書に何を設定するかをすべての項目に対して指定可能です。サーバータブのホームサーバーには「%LOOKUP_MAILSERVER%」とデフォルトで設定されていますが、これは Domino Direcotry のユーザー文書に設定されているホームサーバー名を参照する予約語です。つまり、ユーザー文書の書き換えが終了した時点で、自動的にユーザーのロケーション文書もそれに従って自動変更されるというわけです。
続いてメールタブ。こちらもメールファイルのパスが予約語によってDomino Direcotry 上のユーザー文書より自動取得し設定するようになっています。
内容を確認して、このアクションを有効化し保存。ここまでの設定で1分かからずに完了です。
その他ロケーション文書の変更以外で最低限必要なアクションは
プライベートクラウドやMSP利用時には「接続文書」を作成
旧メールDBのアイコンを削除
旧メールDBのローカルレプリカがあった場合には削除(必要があれば新しいメールDBのローカルレプリカを自動作成、複製ページも同様)
SmartCloud で必要だった ECL エントリーを削除(新しいものも追加)
ワークスペースに新しいメールDBのアイコンを配置
新しいメールDBのブックマークを追加(古いものを削除含む)
6. 段階的に移行するときにこのアクションはどうするの?
ある日、一挙に何千ユーザーを移行させるのは障害発生時の観点からも避けたい、段階的に何百人の単位で毎週移行させたいと考えるお客様もいらっしゃるかと思います。
それをうまく実現させる仕組みも MarvelClient には用意されています。
MarvelClient には誰にアクションを適用させるかを「Who」タブで指定できます。指定する際には予め作成しておいた「アクセス定義」という MarvelClient 内で使用するNotesグループのようなものを使用します。例では「移行ユーザー」というアクセス定義を指定し、該当するユーザーのみこのアクションが適用されるようにすることが可能です。
そして移行ユーザーのアクセス定義に段階的に移行の用意ができたノーツグループを順次追加していくだけです。それぞれの作成済みのアクションには一切手を加えることなく、アクションを実行するユーザーを段階的に増やしたり、逆に減らしたりすることができます。
最後に
現在 ISW/ケートリックの MSP をご契約いただいているお客様からは MarvelClient を使った SmartCloud からの移行でノーツクライアント設定更新がゼロインパクトでできることに賞賛の声をいただいています。
プライベートクラウドへの移行をご検討のお客様にも是非、MarvelClient のご利用をお勧めしますのでご興味がございましたら弊社までお問い合わせください。